派遣元責任者とは? 選任の要件や職務、講習についてわかりやすく解説

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人材派遣業を行なうときは「派遣元責任者」という資格が必要です。派遣元責任者は一定の要件を満たしたうえで、厚生労働省が定めた講習機関が実施する「派遣元責任者講習」を受講すると取得できます。
 
本記事では、派遣元責任者の資格を取得するための要件や、派遣元責任者の職務、派遣元責任者講習を受講する流れなどを詳しく解説します。
 
「人材派遣での起業や派遣会社の設立を検討している」「派遣元責任者って何?どんな資格なの?」とお困りの方は、ぜひ本記事をご覧ください。


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目次[非表示]

  1. 1.派遣元責任者とは?
    1. 1.1.選任する目的
  2. 2.製造専門派遣元責任者とは?
    1. 2.1.派遣元責任者との違い
    2. 2.2.派遣労働者の人数に対する製造専門派遣元責任者の選任数
    3. 2.3.派遣元責任者と製造専門派遣元責任者を兼任する条件
  3. 3.派遣元責任者の欠格事由
  4. 4.派遣元責任者の要件
  5. 5.派遣元責任者の職務
    1. 5.1.派遣労働者であることの明示
    2. 5.2.就業条件などの明示
    3. 5.3.派遣先への通知
    4. 5.4.派遣先・派遣労働者への派遣停止の通知
    5. 5.5.派遣元管理台帳の作成・記録・保存
    6. 5.6.派遣労働者への必要な助言・指導の実施
    7. 5.7.派遣労働者から申出を受けた苦情の処理
    8. 5.8.派遣先との連絡・調整
    9. 5.9.派遣労働者の個人情報などの管理
    10. 5.10.教育訓練およびキャリアコンサルティング
    11. 5.11.安全衛生に関する連絡・調整
  6. 6.派遣元責任者講習について
    1. 6.1.講習の目的
    2. 6.2.講習の対象者
    3. 6.3.申込方法・受講までの流れ
  7. 7.まとめ


派遣元責任者とは?

派遣元責任者とは、人材派遣業(労働者派遣事業)を行なう際、派遣労働者を適切に雇用管理する責任者のことです。
 
派遣元責任者になる資格を得るためには、一定の要件を満たしたうえで、厚生労働省が定めた講習機関が実施する「派遣元責任者講習」を受講する必要があります。また、資格を得たあとも、3年ごとに講習を受けるよう定められています。
 
派遣元責任者が担う主な職務は、以下の通りです。

  • 就業条件などの明示
  • 派遣先への連絡・調整
  • 派遣労働者の個人情報などの管理
  • 教育訓練およびキャリアコンサル
  • 派遣元管理台帳の作成・記載・保存
  • 派遣労働者への必要な助言・指導の実施
  • 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理
  • 派遣先・派遣労働者への派遣停止の連絡 など……

 
派遣元責任者は、派遣元(派遣会社)が雇用する派遣労働者100人ごとに1人以上選任しなくてはなりません。選任する人数や条件などに違反すると、労働者派遣法に抵触しているとして、罰則の対象となるため注意しましょう。


選任する目的

派遣元責任者を選任する主な目的は、以下の2つです。

  • 派遣労働者を適正に雇用管理すること
  • 派遣労働者を適切に保護すること

 
2015年の法改正で労働者派遣法が改正され、すべての派遣会社に対して、派遣元責任者の選任が義務づけられました。
 
派遣元責任者は派遣労働者を保護し、適正に雇用管理する役割を担っているため、「所定の講習を受講すること」「未成年者でなく住所が一定なこと」「雇用管理に適した健康状態であること」などの要件が定められています。


製造専門派遣元責任者とは?

製造専門派遣元責任者とは、製造業へ人材派遣を行なう際に選任する責任者のことです。製造専門派遣元責任者と派遣元責任者の違いや、選任の条件について詳しく解説します。


派遣元責任者との違い

派遣元責任者と製造専門派遣元責任者の主な違いは、派遣労働者を雇用管理する際の業種です。製造専門派遣元責任者は、製造業へ人材派遣を行なう際に選任・配置する責任者を指します。
 
製造業では、危険性が高い有害物質や大型機材などを取り扱う業務が多いため、製造専門派遣元責任者を選任するよう義務づけられています。製造専門派遣元責任者になるための要件などは、通常の派遣元責任者と同様です。


派遣労働者の人数に対する製造専門派遣元責任者の選任数

製造専門派遣元責任者は、製造業を行なう派遣労働者100人ごとに1人以上選任する必要があります。
 
たとえば、製造業を行なう派遣労働者が「100人以下の場合は1人」「101人以上200人以下の場合は2人」製造専門派遣元責任者を選任する必要があるということです。


派遣元責任者と製造専門派遣元責任者を兼任する条件

前述した通り、製造専門派遣元責任者は、製造業を行なう派遣労働者100人ごとに1人以上選任しなくてはなりません。ただし特定の条件下に限り、製造専門派遣元責任者と派遣元責任者を兼任できる場合があります。
 
労働者派遣法により、製造専門派遣元責任者のうち1人は、製造業以外に従事する派遣労働者をあわせて管理できると定められています。つまり、製造専門派遣元責任者のうち1人は、派遣元責任者と兼任できるということです。厚生労働省「派遣元と派遣先との連携」

▼派遣元責任者と製造専門派遣元責任者の選任数の例
例1

製造業への派遣60人・製造業以外の業種への派遣20人の場合

製造専門派遣元責任者1人・派遣元責任者1人が必要。
ただし1人は兼任できるので、製造専門派遣元責任者1人を選任でもOK。

例2

製造業への派遣350人・製造業以外の業種への派遣150人の場合

製造専門派遣元責任者4人・派遣元責任者2人が必要。
ただし1人は兼任できるので、製造専門派遣元責任者4人・派遣元責任者1人の計5人選任でもOK。


派遣元責任者の欠格事由

欠格事由とは「その資格を取得するにあたり、ふさわしくないとされる言動・状態・事柄」などを指す言葉です。派遣元責任者にも、以下のような欠格事由が定められています。

▼労働者派遣事業の欠格事由

  • 未成年である者
  • 外国人で一定の在留資格を有していない者
  • 禁固刑または労働基準法違反等により罰金刑に処せられ、その執行が終わってから5年経過していない者
  • 健康保険法等の規定により罰金刑に処せられ、その執行が終わってから5年経過していない者
  • 心身の故障により派遣業を適正に行なうことができない者
  • 破産手続開始の決定を受け、復権を得ない者
  • 労働者派遣事業の許可を取り消されてから5年経過していない者
  • 暴力団員等(暴力団員または暴力団員でなくなってから5年経過していない者)
  • 暴力団員等がその事業活動を支配している者
  • 暴力団員等をその業務に従事させている、またはその業務の補助者として使用する恐れがある者

出典:厚生労働省「労働者派遣事業の許可制について」


上記の欠格事由にひとつでも該当すると、派遣元責任者の資格は取得できません。派遣元責任者の欠格事由について、より詳細に知りたい場合は、厚生労働省の「労働者派遣事業の欠格事由(3ページ)」をご覧ください。


派遣元責任者の要件

ここからは、派遣元責任者になるための主な要件を解説します。派遣元責任者は、自社で働く従業員もしくは役員から選任しなくてはなりません。

また、派遣元責任者を担う人が、派遣労働者として働くことはできないので注意しましょう。派遣元責任者の資格を得るための要件は、以下の通りです。

▼派遣元責任者の主な要件

  • 未成年者でなく、欠格事由のいずれにも該当しない者であること
  • 労働者派遣法の施行規則第29条で定める要件に従って選任されていること
  • 住所および居住地が一定でないなど、生活根拠が不安定な者でないこと
  • 適正な雇用管理を行なううえで、支障がない健康状態であること
  • 不当に他人の精神・身体・自由を拘束する恐れがない者であること
  • 公衆衛生または公衆道徳上、有害な業務に就かせるなどの行為を行なう恐れがない者であること
  • 派遣元責任者となり得る者の名義を借用し、許可を得ようとする者でないこと
  • 一定の雇用管理・労務管理の経験を有していること
  • 派遣元責任者講習を受講して3年以内であること
  • 外国人の場合は、一定の在留資格を有していること
  • 派遣元責任者が苦情処理などの場合に、日帰りで往復できる地域に人材派遣を行なう者であること

出典:厚生労働省「労働者派遣事業を適正に実施するために(8ページ~)」


なお、厚生労働省では以下のような業務経験を、派遣元責任者の要件としています。派遣元責任者になるには、下記いずれかの業務経験を有している必要があります。

▼派遣元責任者となるために必要な雇用管理・労務管理の経験

  • 成年後、3年以上の雇用管理の経験がある(雇用管理の経験の例:人事または労務の担当者・支店長や工場長・派遣労働者もしくは登録者等の労務担当者など)
  • 成年後、職業安定行政または労働基準行政で3年以上の経験がある
  • 成年後、民営職業紹介事業の従事者として3年以上の経験がある
  • 成年後、労働者供給事業の従事者として3年以上の経験がある

出典:厚生労働省「労働者派遣事業を適正に実施するために(8ページ~)」


派遣元責任者の職務

続いて、派遣元責任者の主な職務を紹介します。


派遣労働者であることの明示

派遣元責任者は、派遣労働者に対して「派遣労働者として雇入れること」を雇用契約書などによって明示する役割があります。
 
なお、紹介予定派遣(派遣先の企業にゆくゆくは直接雇用されることを前提とした人材派遣)の場合は、紹介予定派遣である旨を明示します。


就業条件などの明示

派遣元責任者は、派遣労働者に対して以下のような内容を明示します。

  • 就業条件・業務内容
  • 派遣先企業の社名や所在地
  • 派遣の期間・派遣を開始する日 など


派遣先への通知

派遣先となる企業と連絡をやり取りするのも、派遣元責任者が担う役割のひとつです。派遣元責任者は、派遣先の企業に対して以下のような内容を通知します。

  • 派遣労働者の就業期間
  • 派遣労働者の氏名・性別
  • 派遣労働者の年齢に関する事柄 など


派遣先・派遣労働者への派遣停止の通知

派遣元責任者には「抵触日」を通知する義務があります。人材派遣における抵触日とは、派遣労働者の受け入れ可能期間が満了した翌日のことです。
 
派遣の受け入れ可能期間は、法律により3年と定められています。たとえば2024年4月1日に派遣労働者を受け入れた場合は、2027年3月31日が満了日で、2027年4月1日が抵触日となります。
 
派遣元責任者は、抵触日を派遣先の企業および派遣労働者に通知する役割があります。抵触日の通知は、1ヶ月前から前日までの間に行ないます。


派遣元管理台帳の作成・記録・保存

派遣元管理台帳とは、派遣労働者の氏名・派遣先の社名・派遣期間・就業場所・就業時間などを記録するための台帳です。派遣元管理台帳は、労働者派遣法により、記録すべき項目が定められています。
 
派遣元責任者には、この台帳を作成・記録・保存する役割もあります。なお、台帳は派遣終了日から3年間保存しておくことが義務づけられています。


派遣労働者への必要な助言・指導の実施

派遣元責任者は必要に応じて、派遣労働者へのアドバイスや指導も行ないます。たとえば助言・指導の内容には、以下のようなものが挙げられます。

  • 派遣元および派遣先が実施すべき措置の説明
  • 労働者派遣事業制度・労働者派遣契約の趣旨や内容の説明
  • 労働者派遣法の改正があった場合は、法改正の内容の説明や周知


派遣労働者から申出を受けた苦情の処理

派遣労働者から、就労環境や就労条件などに関する苦情を受けた場合、派遣元責任者は派遣先の企業へ通知・伝達し、改善を促すなどの措置を取る必要があります。


派遣先との連絡・調整

派遣就業に問題が生じたとき、そのほか連絡事項があるときなどに、派遣元責任者は派遣先の企業と連絡・調整を行ないます。


派遣労働者の個人情報などの管理

派遣元(派遣会社)は、派遣労働者の個人情報を適切に取り扱わなくてはなりません。派遣元責任者は、派遣労働者の個人情報を適切に管理・保護するほか、不要になった場合は漏洩の恐れがない方法で破棄します。


教育訓練およびキャリアコンサルティング

派遣元責任者は派遣労働者に対し、就業に必要な知識やスキルなどを、段階的かつ体系的に習得できる教育訓練を実施します。また、職業生活設計に関する相談や、キャリアコンサルティングの機会を確保する役割もあります。


安全衛生に関する連絡・調整

派遣元責任者は、派遣労働者が安全かつ衛生的に働けるように、派遣先の企業と連絡・調整を行なう必要があります。たとえば安全衛生に関する事項には、以下のようなものが挙げられます。

  • 健康診断の実施に関する連絡・調整
  • 安全衛生教育の実施に関する連絡・調整
  • 労災事故などが起きた場合の対応方法の確認


派遣元責任者講習について

派遣元責任者になる資格を得るためには、派遣元責任者講習を受ける必要があります。ここからは、派遣元責任者講習について解説します。


講習の目的

派遣元責任者講習は、派遣元(派遣会社)の適正な事業運営や、派遣労働者の適切な雇用管理などを目的に開催されます。
 
対面講習のほか、オンライン講習を実施している機関もあります。講習で学ぶ主な内容は、以下の通りです。

  • 労働者派遣法について
  • 個人情報保護法について
  • 必要な事務手続きについて
  • 派遣元責任者の職務について
  • 労働基準法・労働契約法など雇用に関する法令について など

 
なお、派遣元責任者講習は、厚生労働省が定めた講習機関によって開催されます。講習に必要な時間は1日のみで、講習機関による内容の違いはありません。


講習の対象者

講習の対象者は、「派遣元責任者に選任されている人」または「派遣元責任者に選任される予定がある人」です。派遣元責任者に選任された経験がある人も、3年ごとに講習を受ける必要があります。


申込方法・受講までの流れ

派遣元責任者講習は、各機関のWebサイトから申し込み可能です。具体的な日程などは、厚生労働省の「派遣元責任者講習の日程及び講習機関等について」からご確認いただけます。
 
申し込み後、メールが来るので内容を確認し、指示に従って受講料を支払いましょう。その後、本人認証などを済ませると、受講票が送られてきます。
 
対面講習の場合、受講当日は受講票や本人確認ができる身分証明書などを持参し、会場に出向いて受講します。オンライン講習の場合は、講義動画を手持ちのデバイスで視聴します。


まとめ

派遣元責任者になるための要件や、派遣元責任者の職務、派遣元責任者講習を受講する流れなどを解説しました。人材派遣業を行なうには、派遣元責任者という資格が必要です。
 
派遣元責任者は、厚生労働省が定めた要件をすべて満たしたうえで、「派遣元責任者講習」を受講することにより取得できます。派遣元責任者の要件や職務などをよく理解し、派遣労働者が快適に就業できるよう努めましょう。
 
 
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