派遣元管理台帳とは? 記載内容や保管方法、期限などをわかりやすく解説


「派遣元管理台帳」のイメージ画像


派遣元管理台帳とは、派遣元企業(=派遣会社)が派遣労働者1名につき、ひとつ作成する管理台帳のこと。労働者派遣法によって作成および3年間の保存が義務づけられており、派遣労働者の個人情報や就労状況、就業先の情報などを詳細に記入する必要があります。
 
本記事では、派遣元管理台帳の概要や記載内容、保管方法などを解説します。混同されやすい派遣先管理台帳との違いや、派遣法の改正で追加された記載内容などもわかりやすく解説しますので、ぜひお役立てください。



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目次[非表示]

  1. 1.派遣元管理台帳とは?
    1. 1.1.派遣先管理台帳との違い
  2. 2.派遣元管理台帳に記載する内容
  3. 3.労働者派遣法の改正で追記された内容
    1. 3.1.協定対象の派遣労働者であるか否かの別
    2. 3.2.派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度
    3. 3.3.雇用安定措置を講じるため聴取した希望の内容
  4. 4.派遣元管理台帳の保管方法と期限
  5. 5.派遣元管理台帳に関する罰則
    1. 5.1.派遣元管理台帳を作成しなくてもよいケース
  6. 6.まとめ


派遣元管理台帳とは?

派遣元管理台帳とは、派遣元企業(=派遣会社)が派遣労働者1名につき、ひとつ作成する管理台帳のことです。労働者派遣法によって、作成および3年間の保存が義務づけられており、違反した場合は罰則の対象となります。
 
派遣元管理台帳を作成・保管する主な目的は、派遣元企業が派遣労働者の就労状況を把握して適切に管理し、雇用の安定を守ることです。そのため、派遣労働者との間に何らかのトラブルが生じたときは、派遣元管理台帳を労働基準監督署に提示するよう求められるケースがあります。


派遣先管理台帳との違い

派遣元管理台帳と混同されやすい書類に「派遣先管理台帳」があります。派遣先管理台帳とは、派遣労働者を受け入れる立場となる派遣先企業が、派遣労働者1名につき、ひとつ作成する管理台帳のことです。
 
派遣先管理台帳は、前述した派遣元管理台帳と対になる書類といえます。派遣先企業は派遣先管理台帳を作成し、業務内容や勤務時間といった派遣労働者の就労状況を記録。一定期間ごとに、派遣元企業へ内容を通知する義務があります。


派遣元管理台帳に記載する内容

派遣元管理台帳に記載する内容は、以下の通りです。

  • 派遣労働者の氏名
  • 60歳以上であるか否かの別
  • 労使協定対象派遣労働者か否かの別 ◎
  • 無期雇用派遣労働者か有期雇用派遣労働者かの別
    (有期雇用派遣労働者の場合は、労働契約期間も記載)
  • 派遣先の名称
  • 派遣先の事業所の名称
  • 派遣先の事業所の所在地、就業場所および組織単位
  • 派遣労働者が従事する業務の種類
  • 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度 ◎
  • 派遣元責任者の名称や役職
  • 派遣先責任者の名称や役職
  • 派遣労働者を派遣する期間
  • 派遣労働者が就業する日
  • 派遣労働者の就業時間(始業時間・終業時間・休憩時間)
  • 派遣労働者の就業日外労働および終業時間外労働
  • 派遣労働者の就業状況
  • 派遣労働者からの苦情処理状況
  • 労働保険や社会保険の被保険者資格取得届の提出の有無
    (提出しない場合は、その理由も記載)
  • 教育訓練の日時および内容
  • キャリアコンサルティングの実施日および内容
  • 希望する雇用安定措置の内容 ◎
  • 期間制限の対象外となる業務の場合は、その業務内容
  • 紹介予定派遣に係る派遣労働者の場合は、紹介予定派遣に関する事項

 ※ ◎がついている項目は、労働者派遣法の改正によって追加されたものです。
 
出典:厚生労働省「派遣元管理台帳(例)」
 

なお、厚生労働省 東京労働局のWebページより、派遣元管理台帳のフォーマットとなるExcelをダウンロードできます。フォーマットを使いたい方は、以下のページをご覧ください。
 
厚生労働省 東京労働局「労働者派遣事業に係る契約書・通知書・台帳関係様式例」


労働者派遣法の改正で追記された内容

2020年および2021年の労働者派遣法改正により、派遣元管理台帳に記載する内容が追加されました。新たに追加された項目は、以下の3つです。

  • 協定対象の派遣労働者であるか否かの別
  • 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度
  • 雇用安定措置を講じるため聴取した希望の内容

 
追加された項目について、それぞれ詳しく見ていきましょう。


協定対象の派遣労働者であるか否かの別

「協定対象の派遣労働者」とは、派遣元と労使協定を結んでいる派遣労働者のことです。派遣労働者が、派遣元と労使協定を結んでいる場合、賃金や福利厚生などの待遇は「労使協定方式」によって決定されます。
 
労使協定方式とは、厚生労働省によって推進されている「同一労働・同一賃金」に対応する方法のことです。厚生労働省では、労使協定方式を以下のように説明しています。

労使協定方式 ~同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額~
 
「労使協定方式」とは、派遣元において、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数代表者と一定の要件を満たす労使協定を締結し、当該協定に基づいて派遣労働者の待遇を決定する方式です。
労使協定に定める「賃金」については、職業安定局長通知で示される、派遣労働者と同種の業務に同一の地域で従事する一般労働者の平均賃金と同等以上になるように決定するとともに、昇給規程等の賃金改善の仕組みを設ける必要があります。

引用:厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」
 

「協定対象の派遣労働者であるか否かの別を記載する」とは、労使協定方式によって賃金などの待遇が決定されている派遣労働者であるか否かを、派遣元管理台帳に記載するという意味です。
 
労使協定方式の場合、派遣労働者の賃金は、厚生労働省が発表する職業安定業務統計や、賃金構造基本統計調査などの公的資料をもとに算出されます。
 
公的資料をもとに、一定以上の水準となるよう待遇が決定されるため、派遣労働者にとっては「派遣先が変わっても賃金が低下しない」などのメリットがあります。
 
一方、派遣元にとっては「賃金の水準が安定するため派遣労働者を確保しやすい」「派遣先が変わるごとに賃金を変動させる必要がないため、派遣労働者の管理業務が比較的楽になる」などのメリットがあります。
 
なお、協定対象の派遣労働者でない場合は、「派遣均等・均衡方式」によって派遣労働者の待遇を決定します。派遣均等・均衡方式では、派遣元企業が派遣先で同業務に従事する社員の待遇を調査し、同等の待遇を派遣労働者にも提供できるよう準備する必要があります。
 
派遣元企業にとっては、派遣先の待遇情報を逐一調査する必要があるほか、派遣先が変わるごとに派遣労働者の待遇を見直す手間もかかります。そのため近年は、多くの派遣元企業が、労使協定方式によって派遣労働者の待遇を決定する傾向にあります。


派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度

労働者派遣法の改正により、「派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度」も記載するよう定められています。派遣労働者が派遣先で行なう業務において、チームリーダーなどの役職に就く場合は、派遣元管理台帳に責任の程度を詳しく記入しましょう。
 
厚生労働省が公開している派遣元管理台帳の記載例では、派遣労働者の責任の程度について、以下のように説明しています。

※派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度
 
派遣労働者が従事する業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等をいうこと。
チームリーダー、副リーダー等の役職を有する派遣労働者であればその具体的な役職を、役職を有さない派遣労働者であればその旨を記載することで足りるが、派遣元事業主と派遣先との間で、派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度について共通認識を持つことができるよう、より具体的に記載することが望ましい。

引用:厚生労働省「派遣元管理台帳(例)」
 

上記の引用にある通り、派遣元管理台帳に派遣労働者の責任の程度を記入するときは、派遣元と派遣先が、役職について共通認識を持てるよう詳細に書くことが大切です。
 
単純に役職名だけを記載するのではなく、「〇〇チームのサブリーダー・部下4名・○○の権限あり・リーダー不在時の緊急対応が週1回程度あり」というように、部下の人数や権限の範囲、緊急対応の程度なども詳しく記入しましょう。
 
派遣労働者が派遣先で役職に就かない場合は、「役職を有さない(部下なし・〇〇の権限なし)」のように、役職がない旨を記載するとよいでしょう。


雇用安定措置を講じるため聴取した希望の内容

原則として、派遣労働者は同じ事業所に3年以上勤められません。そのため派遣元には、以下のような「派遣労働者の雇用の安定を守る措置」を講じることが義務づけられています。

  • 派遣労働者を派遣元で無期雇用とする
  • 派遣先に派遣労働者を直接雇用するよう依頼する
  • 派遣労働者の能力・経験に適した新しい派遣先を提供する
  • そのほか安定的な雇用の継続を図るため必要な措置を講じる
    (紹介予定派遣を実施する・有給で教育訓練を行なう など……)

 
労働者派遣法の改正によって、派遣労働者が希望する雇用安定措置の内容を、派遣元管理台帳に記載するよう定められました。派遣労働者が希望する雇用安定措置の内容は、なるべく複数かつ具体的に記載し、聴取した日付や優先順位なども記しておきましょう。

雇用安定措置の内容

  1. 派遣先への直接雇用の依頼
    日時・方法:○年○月○日 文書により依頼
    派遣先の回答日時・内容:○年○月○日 受入可(雇用形態:正社員)
  2. 他の派遣先の紹介 省略
  3. 期間を定めない雇用の機会の確保 省略
  4. その他 省略

引用:厚生労働省「派遣元管理台帳(例)」
 

上記のように、派遣労働者が希望する雇用安定措置の内容と聴取した日時、派遣先の回答などを具体的に記載しましょう。


派遣元管理台帳の保管方法と期限

派遣元管理台帳は、紙またはデータで作成し、派遣元の事業所ごとに保管します。保管期限は、派遣契約が終了した日から3年間です。
 
データで作成する場合は、パソコンの故障やデータ消失のトラブルに備えて、USBメモリなどにバックアップを取っておきましょう。派遣元管理台帳を作成・管理できるクラウドサービスもあるので、派遣労働者の人数が多い場合は利用するとよいでしょう。
 
また、派遣元管理台帳を紙媒体で作成・保管する場合も、紛失に備えておくことが大切です。たとえば「原本は必ず鍵のかかる場所で保管する」「ファイリング前に紙面をスキャンしてデータ化する」など、紛失や盗難への備えを強化しましょう。


派遣元管理台帳に関する罰則

派遣元管理台帳は、労働者派遣法によって作成および保管が義務づけられています。派遣元管理台帳を適切に作成・保管しなかった場合、30万円以下の罰金を科される可能性があるので注意しましょう。
 
罰金刑となった場合、労働者派遣許可が取り消される可能性もあります。不備による罰則を受けないよう、派遣元管理台帳は適切に作成・保管しましょう。


派遣元管理台帳を作成しなくてもよいケース

派遣労働者と派遣元の正社員が合計5名以下の場合に限り、派遣元管理台帳を作成しなくてもよいとされています。
 
しかし派遣元管理台帳は、派遣労働者の就労状況を正しく把握するため重要なものです。派遣元が小規模事業所であったとしても、なるべく作成・保管するのが望ましいでしょう。
 
万が一、派遣労働者との間にトラブルが生じた場合、派遣元管理台帳があれば、事実確認をスムーズに進められるかもしれません。小規模事業所であっても、念のため法令に従って作成・保管しておいたほうがよいでしょう。


まとめ

派遣元管理台帳の概要や記載内容、保管期限などを解説しました。派遣元管理台帳とは、派遣元企業(=派遣会社)が派遣労働者1名につき、ひとつ作成する管理台帳のことです。
 
労働者派遣法によって、作成および3年間の保存が義務づけられており、違反した場合は30万円以下の罰金刑となる可能性があります。
 
派遣元管理台帳は、派遣労働者の就労状況を正確に把握し、雇用の安定を守るために重要なものです。適切に運用し、派遣労働者が安心して就労できるよう努めましょう。


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